「はぁっ!!やぁっ!!」
私は、今日も修行に明け暮れていた。努力のおかげでようやく宝貝を授かることができたのだ。
「あ〜ぁ。疲れた・・ちょっと休憩っと・・」
休まず修行をしていたため、宝貝が汗ばんでいた。まだ慣れていない上に、一回休むと疲れがどっとくる。
その場で大の字で横になってみる。
「きもち〜い!!」
緑の草原がふかふかの絨毯みたいで眠くなってくる。いつの間にか私は眠りについてしまっていた。
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「。これからは我ら四聖の為に尽くしてくれ。お前の力が必要だ。」
王魔が言った。
(えぇ〜っ。とうとう私、四聖に認めてもらえたの!?子ども扱いされ続けてたのに・・信じられない)
「聞仲様のため、私たちと共にがんばっていこうではないか」
王魔に続いて高友乾と李興覇がにっこりと私に言った。
(ほんとなの・・ほんとに!!信じてもいいのかな・・あの四聖に尽くせるなんて)
「。頼りにしているぞ。今までよくくじけずにがんばったな」
言われたとたん心臓が高鳴った・・
(私の大好きな楊森さん・・ちょっ!ちょっと待って今なんていったの!!)
頼りにしているぞ・・よくがんばったな・・私の頭にはそのセリフが何度もエコーしていた。
「やった〜ぁ!!!」
「何がやったぁなんだ??うん??」
悲しくもじぶんの大きな寝言で幸せな夢から追放され、更に大!大!大好きな人たちに大声で寝言を叫ぶ瞬間を見られるという悪夢のような出来事が起きた。
四聖が腹を抱えて笑っている。楊森さんはと・・
(いや〜っ!!楊森さんまで笑ってる〜)
はぁ・・どうしてこんなに起きて早々悲しい気持ちにならなければならないんだろうか。
「お前、どんな夢見てたんだよ」
李興覇が笑いをこらえながらからかうように私に言った。
その場を取り繕ういいわけを考えるのも面倒だった私は正直に話した。
「あのね。みんなが、これからは四聖のために力を尽くしてほしいって・・私の事ようやく認めてくれたの・・」
そしたらまたみんなが笑った。
「ははっ。まだ、我々と共に戦うのは力不足だな。毎日がんばってはいるようだが・・」
王魔が笑いながら言う。
「は俺たちが疲れたとき癒しになってくれるからな・・それだけで十分だと思うが」
にっこりと楊森さん・・
ガ〜ン!!
楊森さんまで・・癒しになってくれるって言われるのは嬉しいけど・・でも私は・・
なんと言っていいかわからず私はその場を逃走してしまった。
「お〜い!どうしたんだよ!!」
みんなの呼ぶ声が聞こえる。でも今は戻りたくない。
走って走った・・
気づくと私は小高い丘の上にいた。こんなところが近くにあったのかと思ったけど今はどうでも良かった。
はぁ・・逃げてきちゃった。やっぱりまだ修行が足りないんだ。相変わらず子ども扱いだし・・。なんであんな期待させるような夢見せるのよ・・
イライラして私は近くにあった石を遠くに投げた・・
ぼかっつ!!
丘の頂上なので何がいるか見えないのだが確かにそいつに当たった。
(だっ・・誰かに当たった!!ヤバイ!!)
隠れたいが芝生の丘・・殺風景過ぎ!!せめて木の一本くらい生えててほしいと思った瞬間だった。
(どうしよう・・)
本当に今日はついてない・・
おどおどぐるぐる狼狽していたら頭を抱えながら楊森さんがやってきた。
「・・前より力が強くなったみたいだな・・」
「楊森さん・・うそっ!!ごめんなさい!!大丈夫ですか??」
(何で楊森さんにあたるかなっ・・。私のバカっ!!)
私は慌てて楊森さんに駆け寄って頭を触ってみた・・
「たんこぶができてるよ!!本当に大丈夫ですか??」
「これくらいどうってことない・・。それよりなんで逃げたんだ。」
楊森さんは私の心配をよそに話を続ける。どうって事ないって言われても私にとって楊森さんは大切な人だから・・たとえ怪我のひとつでも心配せずには要られない。
「どうでもいい事じゃないよ!!楊森さんのけがひとつでも私はとても心配なんです。
私は楊森さんたちと一緒にいることができないから、いつも、毎日心配で仕方がないんです。今、怪我して倒れているんじゃないかとか・・。四聖は強いです!!敵に負けることなんて絶対にない!!でも大切な人達だからやっぱり心配なんです・・」
楊森はため息をつくと大地の力を借りて自らを治療した。
「大丈夫だ。もう心配する必要はない。」
恐る恐る触れてみるとさっきの痛々しいたんこぶは消えていた。ふいに楊森に腕をつかまれた。
「修行のせいか??お前のほうがよっぽど怪我が多いようだが。治してやる。」
腕や足と順々にどんどん治療していってくれた。痛みが和らいでくるのがわかる。
治療しているときの楊森さんをちらりと見てみる。真剣な表情がいつもに増してかっこいい・・
「何でじっと見ている・・」
治療が終わっていたにもかかわらず私は楊森さんをじっとみつめていたらしい。
「あっ!!ごめん!!そんなに見てた??」
そう言って誤魔化した。しかしばればれだったらしく
「ちがうな・・だったらそんなに赤くなるはずがない。目も泳いでいる・・」
と言われてしまった。
「本当は何を考えている??・・」
「何を考えているって言われても・・ただ治療してるときの楊森さんが真剣でかっこいいなぁ・・なんて」
私はさらりと恥ずかしがることもなく言った。
言ったとたん楊森さんはどう反応していいか分らないみたいで目がきょろきょろと泳いでいた。顔を赤くして・・
「楊森さんこそ顔赤いよ・・私みたいに、目泳いでるし・・」
「赤くなどなってない・・、お前のようにバカみたいに目も泳ぐはずがない・・」
必死に目を合わせようとする楊森さんがかなりおもしろい。私は思わず噴出してしまった。
「あはは。楊森さん一生懸命、目を合わせようとしてるでしょ??そんなにかっこいいって言ったこと恥ずかしかったの??」
「別に・・」
といってそっぽを向く楊森さん・・私が更に追い討ちをかける・・
「だってほんとの事だよ・・楊森さんの真剣なところすごく好き!!それに楊森さんのことずっと好きなんだから。滅多に会えないからこれくらい積極的に言っとかないと私のこと忘れちゃうでしょう??」
楊森さんが固まってしまった・・そんなにびっくりしたのかなぁ・・
正直、私も地面にうずくまりたい気分なのだがこのチャンスを逃すわけには行かない・・
「ずっと好きだったの・・楊森さん!!だから側にいたくて修行して修行して・・
早くみんなと一緒に戦えるように強くなりたくて・・」
何を言ったか緊張でおぼえてないけど気持ちは伝えられたはず・・
またいつ会えるか分らなくて、待ち焦がれてばかりの日々を送るくらいならいっそ此処で玉砕してしまおうとやけくそになった。焦りは禁物というけれど・・でも・・
楊森さんはなんて私に言うんだろ・・
緊張と恐怖が私にまとわりつく。足はがたがた震えるしもう半泣き状態だ。
今、楊森さんの目を見つめる事は怖く感じてうつむいて返答を待った。
「」
私を楊森さんが呼ぶ。
「ははははぁい。な・な・なんでしょう」
「おい!そんなに緊張するなよ・・言いづらい」
楊森さんは頭を掻きながら恥ずかしそうに言う。
「。実は俺もずっと好きだったんだ。でも、俺はのように自分の思いを素直に伝えるのが苦手だから・・なかなかいいだせなくて・・」
「ほんと?ほんとなの??」
私は嬉しさのあまりその場で泣いてよろこんだ。
「あぁ。に言ってもらえると思わなかった・・いつか言おうと決めていたんだがな・・こんなにこわばらせてしまってすまない・・」
そうだったんだ・・
私は楊森さんの腕に抱きついてにっこりと笑った。
「楊森さん大好きっ!!」
「ふっ、今日のは積極的で困る・・」
そういいながらも私の腕をしっかりと握り返してくれた。
楊森さんと仲良く、みんなのところへ戻ると、
「おい心配したんだぞ」
と怒られた。いつの間にか日も落ちていたのでかなり心配していたらしい。
「ごめんなさい。」
「心配かけた。」
楊森さんと私はみんなに誤った。
「それよりもお二人さん仲がいいねぇ」
高友乾がからかうようにいった。
「なんのことだ?」
楊森さんが高友乾に問いかける。
「どうしたんだよ!仲良く手なんかつないじゃってよ!!」
楊森さんと私は、お互い顔を見合わせてあわてて手を外した。2人で顔が赤くなっているのが分る。
周りがそれを見て大爆笑の渦に巻き込まれたのはいうまでもない。
その後楊森さんは、四聖を抜けてと結婚するべきだとか、キスはしたのかなどと聞かれみんなにからかわれてしまったらしい。
もちろん楊森さんは四聖を抜けるはずもなく私にこう約束してくれた。
「次に来るときまでにこの宝貝を使いこなしておけ。できるようになれば、お前を連れて行くことにする。そしたら聞仲様にも紹介できるからな。」
どうやら私を聞仲様に紹介してくれるらしい・・更に
「たとえ宝貝が使えなくても俺が護ってやるがな・・」
と赤面モノの一言!!
そう言い残し楊森さんは去っていった。四聖のみんなも楽しみにしているからなと言って楊森さんの後に続く。私はみんなが見えなくなるまで見送った。
今度会うまでに立派な道士になっておくね・・
時にはあなたに護られたくって甘えてしまうかもしれないけど・・
約束を果たすから待っててね。
あなたの約束を思い出すと驚くくらい力がわいてくるのが解るんだ。
今日も元気よく掛け声を上げながら私は修行を始めた。
あの夢が現実になることを信じて・・