今日、私は望ちゃんと星を見に行く約束をしたんだ。毎日望ちゃんは忙しいと分かっているけれど二人っきりで出かけたかった。豊邑の町のはずれに行くと小高い丘がある。私の秘密の場所・・望ちゃんだからこそ教えるの。
きっとあの風景を見れば疲れも取れるはず。さてと!もうすぐ待ち合わせの時間だ。急がなくっちゃ。
「遅いなぁ〜。何してるんだろ。まさか、望ちゃんの事だから約束忘れてだらだら寝てそう・・。
大丈夫かなぁ。うぅ。寒い・・もう少し待とう。絶対に文句言ってやるんだから。」
今、丁度秋から冬へと季節の変わり目の時期だ。昼はまだしも夜は寒い。着込んできたつもりだったがやはり寒いものは寒かった。私が座り込もうかなぁと思ったそのとき
「すまん。待たせたのう。は、約束したらその時間よりも早く来てしっかり待っとるタイプなんだな。」
(えっ?どういうこっちゃねん??)
私は考えた、約束した時間に来て?はて?今確かに自分の時計には待ち合わせの時間より1時間後が表示されている。
「何いってるの?望ちゃん今もう9時だよっ。待ち合わせは8時だったよ!」
望ちゃんは不思議そうな顔をしてこう言った。
「何を勘違いしておるのかのう。。今がきっかり8時のはず。わしも早く出てきたからのう」 l
えぇ。うっそ・・
其の時、私の今日の出来事がめまぐるしく頭の中で回想されていった。
しまったぁ〜〜〜!!
望ちゃんは私がいきなり叫びだしたので目を白黒させて驚いている。驚かせてごめんね・・
そう、今日昼寝をしているとき寝起きの悪い私はきちんと2時間前ぐらいに設定して目覚ましをかけてしまっていた。ちなみにこの時計は、目覚まし時計(ちなみに音は危険なくらいでかい。私は丁度いいけど・・)と腕時計の機能付きでWでお得な代物だ。昔、太乙に寝起きの悪い私がどこでも昼寝できる目覚ましをくれといったらこれをつくってくれた。
あの後、そんなことも忘れてうきうき気分で西岐城を飛び出していったのを覚えている。私はそこから1時間以上も馬鹿みたいに愚痴を一人で言って待っていたのだ。
馬鹿じゃん・・あたし・・
そのことを望ちゃんに全部打ち明けた。望ちゃんはくつくつ腹を抱えて笑った。
「おぬしはドジだのう。はぁ、おかしいのう。」
まだ望ちゃんは笑っている。
「そんなに笑わなくてもいいじゃない!くしゅん!!うぅ・・寒っ!!」
体が震えている。私の体の中で風邪を引くという危険信号がなっている。
「まったく。世話をかけるでない。ほら。」
そう言って望ちゃんは上着を脱いで私に優しく掛けてくれた。
「望ちゃん。風引くよ。だめだよ!!」
明らかに私より薄着で寒そうだ。
「何を言っておる。おぬし震えとるじゃないか。相手を気遣う前に自分の心配をしろ。ほれ、さっさと夜景をみるぞ」
望ちゃんは言いながらさっさと進んだ。後姿を見ながらこうおもった。
(相手を気遣う前に自分のことを心配しろって・・。望ちゃんは、いつも自分のことを忘れるくらい人の心配ばかりして・・望ちゃんにもその言葉当てはまっていると思うけど・・。でも、そこが彼の一番いいところなんだけどね。)
そんなことを考えながら歩いているとふと望ちゃんがふりかえった。
「。一言いっておくぞ。わしは、おぬしを待たせておくような愚か者ではないよ。大切な者を一人きりにできるわけないであろう。お主が1時間待ったというなら・・そうだな・・この次からわしは2時間はやくまっておくかのう。が来るまで待っておくよ・・」
そう言うとまた望ちゃんは後ろを向いて歩き始めた。私は体中が熱くなった。やばい!!嬉しい!!恥ずかしい・・
嬉しくて涙でそう・・あぁ、でもそんなこと考えてる暇じゃなかったここから案内しなくちゃ!!私は、彼に駆け寄った。
「えっとね。あの丘を登ると星がすごいきれいなの。着いてきて。」
二人で仲良く会話しながら歩いていくといつの間にか着いていた。
「ついたぁ。」
「結構歩いたのう。」
しばらく沈黙が続いたけれど嫌いな沈黙ではなかった。
「ねぇ。望ちゃん」
「なんだ?」
私がその沈黙を破った。言っておきたかったから・・
「ここね。あたしだけの秘密の場所だったの。目をこうして閉じてこの雄大な自然を感じるの・・時には、悩んだりしてここでいろいろ考えたり・・昼寝したり、いろいろ!!本当は、誰にも言わないで私だけの領域にするつもりだったの。でもね・・望ちゃんだから・・教えるの。」
なんか告白みたい・・言い終わった後、ちょっと恥ずかしかった。ふと望ちゃんを見ると
顔が赤くなってる!!かわいい!!じぃ〜っとみてしまった。
「これ!!見るでない!!」
見ているのがバレて望ちゃんはそっぽを向いた。しょうがない。これ以上彼を追い詰めるのはやめよう。
「あつそうそう。皆には秘密だよ。」
望ちゃんは、向き直ると言った。
「馬鹿。おぬしとの二人だけでいられる場所を易々と話せるものか。」
嬉しい。照れてるのがばれないように夜空の星を見上げた。また優しい沈黙・・
其の時流れ星が落ちた。
「あっ。」
同時に二人の声が重なった。
「望ちゃん。願い事3回唱えなきゃ!!」
目を閉じてお願い事をした。目を開けると望ちゃんはまだ願い事しているらしかった。
「望ちゃんは何を願ったの?」
「おぬしは?」
「秘密!」
「じゃあ、わしも言わん」
「えーぇ気になる。」
「じゃあ、が言ったら教えるよ。」
同時に二人でくすくす笑いあった。
ちょっと戸惑ったけど・・言っちゃおうかなっ。
「同時に言おうよ。」
「それならかまわんよ」
また同時に深呼吸した。緊張するなぁ。がんばれ私・・なんとなく望ちゃんも緊張しているように見えた。
そして、言葉が重なった。
「いつまでも一緒にいられますように」
二人で呆然・・
「望ちゃん・・」
「。おぬし・・」
照れを取るため二人で笑いあう。そして、静かに口づけた。今まで食べたどんなお菓子よりも甘かった・・
そして、余韻を残すかのように静かはなれた。
「これからも一緒にいられるといいね。」
「そうだのう。の事はしっかり守るよ。」
「なぁ〜に言ってるの望ちゃん!!私だって。戦えるんだよ。望ちゃんの事守ることだってできるよ・・」
私は、望ちゃんのためなら死ぬ覚悟ができている。もとより太公望に力を貸せという任命を受けてきたそのときから思っていた。そんなことを思っていたら察したのか
「少し黙っておれ。今日は星をみにきたのだろう?」
そう。せっかくの2人だけの夜景・・
「そうだね・・」
手を重ねて夜が明けるまで眺めていた。もちろん寝不足になったけれど望ちゃんと私の仲が深まった事には変わりはなかった。